前世記憶第三章です。

September 21, 2016

 

第三章 姉の苦悩、そして戦へ

 

 

僕たち兄弟には、それぞれ20畳ほどの部屋をあてがわれていました。

 

壁と床は、磨かれた白い石が重ねられ造られていました。

 

大きな窓には、麻でできたカーテンのような布がかけられています。

 

暑い夜などは、布も上のほうに束ねられ、大きな月がよく見えました。

 

光に照らされ、全ての調度品が美しく、光り輝いていました。

 

 

母が牢獄に入れられてから、その広い部屋で、姉はひとりでした。

 

僕も、おしゃべりに訪ねましたし、従事する人間が世話をすることはありましたが、

 

姉の心には孤独感がどんどん深まっていきました。

 

 

姉と兄はきょうだいでありましたが、契りを交わした仲でした。

 

この当時、きょうだいが恋愛関係であったり、結婚関係であったりすることはごく自然なことでした。

 

子どもの頃から相性がよく、理解しあっていた姉と兄とは、

 

ある一定の年齢に達したときには、ふたりでこの国を支えていこう、

 

繁栄させていこうという思いを強くしていたのです。

 

ですから、ふたりが二人の仲で将来愛を誓い合い、

 

結婚する約束をしていたのは自然の成り行きであったのです。

 

そのような関係を大切に育んでいけると思われた二人でしたが、

 

城の中が重い雰囲気になってくるにつれて、だんだんと姉の不安は募っていきました。

 

兄は母を支えようと、日々奔走し、姉とよい関係を保つことができなくなっていました。

 

ただ、お互いが優しい言葉をかけ合い、思い合い、二人だけの時間をもつことで

 

解消できたはずの行き違いでしたが、当時の幼い二人には

 

そのような余裕はありませんでした。

 

私はその時、姉がうまくいっていないことが、気づけていませんでした。

 

私もまた幼く、二人の気持ちを知る力を持ち合わせていなかったのです。

 

 

ある日、突如父である王が隣国を攻め入るという決断をしました。

 

それは兄にとっても、姉にとっても、そして僕にとっても重くのしかかる出来事で、

 

賢い兄は、その決断を思い留まらせようとしましたが、王の判断は揺らぐことはなく、

 

戦いへと、時代は着々と流れていきました。

 

少しずつ、民衆が集められはじめ、武器を作る職人が生まれ、

 

だんだんと国が戦いへと進んでいきました。

 

王が戦を始めると決意した理由には、隣国が海沿いであり、

 

海の幸を得られること、海から他国と貿易ができるだろうこと、

 

そして、何よりも、隣国にしかない文明を欲したことにありました。

 

そして、その判断を下すことができたのは、一番の邪魔者であった、

 

戦争に強く反対をしていた母を捕らえたという、強い安心感からでした。

 

 

また、戦争は、国民にとっても、ある意味、大きなチャンスだったのです。

 

貧しい家に生まれた者であっても、腕っ節が強く、喧嘩ができれば栄誉を勝ち取ることができる、

 

国に尽くすことで、名誉を、そして何より富を手にすることができる。

 

そういう考えから、民衆は沸き立ち、何とか貧しい暮らしから逃れたいと願う男性は

 

こぞって兵士として城の前にやってきたのでした。

 

国王、兵士、集められた民衆、そして兄もまた戦にでました。

 

僕は、幼いことから城に残りましたが、

 

戦の気配が漂い、殺気と落胆、そして狂乱状態に包まれるなか、

 

母を失い、また愛する兄を失うのではないかと不安に駆られた姉は

 

ますます寂しく、ひとりの時を過ごすこととなりました。

 

それでも姉は、兄の無事、そして国民の無事を切に願い、

 

優しさと、慈悲の心を忘れることはありませんでした。

 

 

一週間以上歩き続け、隣国との境界線上近くに陣を取りました。

 

そこで、王、兄、母の兄で、王の右腕であった伯父、

 

その伯父の息子(伯父の息子と兄は親友関係でありました)、

 

この4人でどのような戦いをするのか話し合われました。

 

敵国の城を中心に後ろ側を伯父と息子が攻め入ります。

 

少し時間を空けて王子が左手から、そしてその一時間後に王が右手から、時間差で攻め入ります。

 

そうすると敵国が逃げる先は十キロ先の海だけ。海まで後退すれば、逃げる場所はありません。

 

 

戦いはこうして始まりました。

 

相手国が私たちが攻め入ることを知っていたのかどうかはわかりませんが、

 

多くの兵士に弓矢で応戦されて、前へ進むことは容易ではありませんでしたが、

 

敵軍も、多くの兵士を失ったであろうことは、目に見えました。

 

 

緒戦を優勢に終えた後、疲れからか王は突然の高熱に冒され、

 

それは戦いに挑むことのできないほどでした。

 

3日間、山の中で療養はしたものの、体力が衰えて戦いには出られないだろうと話し合われ、

 

王だけが兵士とともに城に引き返す判断がなされました。

 

代わりに、王子である兄が指揮を執ることになり、

 

兄の隊は、父の代わりに伯父の息子が引き継ぎました。

 

兄は、瞬発的な判断力と行動力に優れた人間です。

 

兵士からも厚い信頼を受け、二戦目は前以上に統率のとれた、

 

勢いのある戦いとなりました。

 

敵の軍勢が崩れるまであと少し、というところで日が暮れ、兄は撤退の判断を下します。

 

休戦状態へと考えを変更したのです。

 

すぐさま、兄は隣国へ和解を申し出ました。

 

これ以上両国の兵士を失うことは良いことではないということ、

 

そして一日も早くこちらに有利な平和協定を結び、

 

我が国が強い国であるということを諸国に知らしめることで、

 

敵視を逃れなければならないと思ったからです。

 

ぐずぐずしていれば、諸国に攻め入れられる可能性もでてきます。

 

また、王が病気であるということが諸国に知れ渡ることも危険なことです。

 

提案した休戦協定は、兄の読みどおり、ほとんどは我が国の思い通りに運びました。

 

しかし、ただひとつ、大きな条件が課せられました。

 

「隣国の姫を我が国の女王の座へ迎え入れること」

 

兄はしばしの深い思案の後、そのただひとつの条件を飲むことに決めました。

 

国を守るためには致し方ないという判断だったと思われます。

 

 

しかし、使者からの伝言でそれを聞いた姉は絶望の淵へと落とされたのでありました。

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